Home>>【開業後に】経営>>クリニック経営での労務トラブル対応術②
矢野 厚登
税理士法人ブレインパートナー 代表

クリニック経営での労務トラブル対応術
②常勤スタッフ採用のトラブルを回避するには?

クリニック経営に重要な「常勤スタッフ」


さて、今回も前回に引き続き労務トラブルを回避するための注意点を解説していきますが、第二回目となる今回は、特に医院運営の中心を担う「常勤」スタッフの採用に関する注意点をご紹介します。
優秀なスタッフを採用することで、先生方が診療により集中でき、クリニックの発展が望めます。良い人材の採用につながるよう採用方針を決定しましょう。


スタッフ採用前に念頭におくべきこと


スタッフの採用前に、安易な採用にならないようどのような点に注意すべきか、経営の観点から具体的に解説していきます。



① 常勤採用は職員安定につながるとの固定観念を捨てる
優秀なスタッフであったとしても必ずしも常勤希望とは限りません。逆に妥協して常勤採用をしたもののやはり思ったほどの能力がないといったことがあります。優秀なスタッフはたとえ勤務希望時間が少なくとも採用すべきです。
特に看護師その他クリニックに必要な有資格者は確保しておきましょう。その時点ではパート勤務しかできなくても、家庭環境や医療環境は年々必ず変化します。家族構成の変化やお子さんの成長など、将来において常勤に登用できれば採用コストを抑えることにもつながります。


② 主軸となるスタッフは雇用してから決める
常勤希望者を採用し、主軸として勤務してもらいたいといったこともあるかと思います。
しかし実際の医院運営においては、誰を主軸とするかは実際の勤務態度や能力、他のスタッフとの関係をみて判断すべきです。職歴や経験年数など履歴書上から分かる情報ももちろん重要ですが、やはり主軸になるスタッフは開業後の勤務状況をみてから決めたほうがよいでしょう。


③なぜ現職を辞めてでも新規開業医院へ応募者がいるか考える
給与が安いだけの理由から転職したい応募者は稀だと思います。転職理由を必ず確認してください。面接時に質問した事柄はシートに残し、採用時の約束事はまとめてデータとして保存するようにします。
近年の求職者の傾向として、純粋な給与の額の多少よりも自分の時間の確保を重視します。採用にあたっては有給休暇の取得や、自身あるいはお子さん等の急な体調不良時も含め、ある程度勤務に調整のきく、いわば「休める環境」の充実を最大の福利厚生にしましょう。その為にも余裕をもった人事採用計画をしっかりと検討することが重要です。

また採用に当たっては近隣在住のスタッフを優先した方がよいでしょう。通勤時間が短いことは自分の時間の確保という観点からみても、スタッフには大きなメリットです。またクリニックにとっても通勤費という必要経費の節約になります。しかしどうしても欲しい人材は遠方からでも確保した方がよいでしょう。


④親しい常勤希望者採用の場合の注意点を知ろう
新規に人材を採用する場合は、本人の性格や能力がわからないことから、親しい人を常勤採用しようと考えることがあります。しかし、あくまで有力候補者とするのが望ましいでしょう。他の一般応募者との人間関係や連携がうまくいかない場合、不満が生じる可能性があります。

同様に身内スタッフは置かないようにしましょう。命令系統の混乱を招く場合が多くなります。もし身内スタッフを置かざるを得ない場合は、院長先生が命令系統のトップである事を他のスタッフにもしっかりと認識させておく必要があります。
また気心しれた希望者でも応募を断る状況が生じた場合は早めに断ることが重要です。


⑤地域医療における患者ニーズと職員の安定化と期待は基本的に同じ
一般的に患者もスタッフも、より自宅に近く、通勤、通院に便利なクリニックを選びます。スタッフ応募者数は来院患者に比例するといってもいいかもしれません。スタッフが知る地域の医療環境には経営安定につながるヒントがあります。そこに住むスタッフは地域の医療環境をたいへん良く知っており、職員にとって良いクリニックはつまり患者にとっても良いクリニックということになります。これは診療圏調査ではなかなか知ることが出来ない大切な要素です。

大切なのは地域住民への愛着度合いでは負けないという付加価値を持つことです。例えば病診連携・診診連携・介護連携などとのより良好な関係をいち早く構築することです。よい医院に通いたいといったことはよい医院に勤めたいといったことにつながります。

アドバイザー情報


税理士法人ブレインパートナー 代表
矢野 厚登(ヤノ ヒロト)

昭和62年に日本債券信用銀行入社後、監査法人トーマツを経て、平成9年にブレインパートナーを設立。
単に記帳代行業務などだけを請け負うだけではなく、経営者のパートナーとして共に事業のことを真剣に考える関係になるよう心がけています。
著書もいくつかあり、「介護保険と病院経営」「病医院の経営・会計・税務」等を執筆しています。

アドバイザーに質問する・相談する