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谷口 敏也
株式会社ユヤマ 地域医療支援室 メディカルコーディネーター課長

失敗しない!クリニックモールでの開業で気をつけるべきポイント


複数の診療所と調剤薬局が同じ施設に入居する「クリニックモール」が増えています。日本経済新聞によれば、クリニックモールは全国で1千施設以上あり、今後、年百ヶ所以上のペースで増える見通しだと言われています。
今回は、このクリニックモールの種類や形態、問題点などを解説致します。

 

クリニックモールの形態

診療所が新規に開業する場合、その形態は概ね①ビルテナント ②戸建て所有 ③戸建て賃貸 ④クリニックモール ⑤クリニックビレッジ の5つに集約されます。
近年、その中でも、クリニックモール(ビルのワンフロアで複数の診療科が開設する施設)やクリニックビレッジ(郊外に複数の診療科が戸建形式で共有の広い駐車場を備えて開業する施設)が注目され始めました。


ショッピングセンターやオフィスビル内に診療所を集約しただけのクリニックモールに代わり、最近では「抗加齢」の専門性を打ち出したり、女性外来に特化したりなど、モール全体を通したコンセプトを持った施設が増えてきました。

このようなクリニックモールには企画・運営する企業の存在が欠かせないようです。

クリニックモールでの開業のメリット

クリニックモールは開業時の初期費用を抑えることができます。なぜなら、事務室や職員の控え室、トイレなどの間接スペースが削減でき、駐車スペースも共有化し賃借面積を抑えることができるからです。
最近では受付や待合室を共有化した施設などもあります。また、合同広告による費用の分担も可能です。

集客性が高いこともクリニックモールの特長です。患者さまにとって同時に複数のクリニックに通えるため、利便性が高まります。
また、患者さまに専門分野以外の疾患があった場合には、ドクターはすぐに同じフロアの専門の診療所に紹介できるため、患者さまに安心していただけます。

さらに、医師として、経営者として不安も多い開業医ですが、身近に相談できるドクターが近くにいることで、不安・孤独感、あるいは精神的ストレスが軽減できます。

 

クリニックモールの企画・運営会社

クリニックモールには企画・運営会社が存在します。調剤薬局、ドラッグストアが最も多い形態です。クリニックモール内での調剤薬局出店には大きなメリットがあるからです。

また、ゼネコン、ハウスメーカーも積極的に展開しています。ゼネコンはビルやマンションの付加価値を高めること、ハウスメーカーは資産家の相続税対策を目的に手がけることが多くあります。
治験医療機関の抱え込みを目的に治験事業者も参入しています。さらに、最近急増しているのが、外資系ファンドです。付加価値をつけることで賃貸収入のアップを図っています。投資家は利回りの高い投資物件として期待しています。

クリニックモールの注意点(行政上の制約)

共有化によるメリットがありますが、あくまでもクリニックは個々に独立していることが前提となります。
例えば、
① 共同待合では診療報酬の窓口支払の授受
② カルテの診療所以外の持ち出しや電子カルテの共有サーバーの利用
③ 医療機器の共同所有(あるクリニックが所有する医療機器を共同で利用することは可能)
が禁止されています。
また、社会保障審議会医療部会の基本的見解では、受付や待合室の共同利用は、未受診の段階で感染が起こった場合の責任分担が困難なので禁止する方針としています。

但し、管轄の保健所、社会保険事務所を相談窓口として、個別審査、指導事項により、地区によっては、許可が下りるケースもあります。 この場合でも、総合受付は、新規患者への共通カードの作成(1枚で複数のクリニックの予約が可能)や受付自動発券機の設置と受付番号票の配布に止まり、各クリニックの受付で保険証提示、カルテ作成、診療終了後の窓口負担の徴収を行っています。受付やカルテ作成などの共同利用には依然、行政上の制約がありますが、今後の規制緩和に期待したいものです。

クリニックモール選択のポイント

運営会社による医療事務の受託や人材募集(派遣)、開業指導によるコンサルティングがあれば、運営効率のアップにつながります。また、統一されたコンセプトを維持するためには、医師同士の協調性が不可欠ですが、一方で、患者数の格差による不公平感から共同負担を嫌がるクリニックも現れます。このような時には各クリニックの調整役を担う運営会社の役割が大切になってきます。

 運営会社はクリニックモール開設にあたってのマーケティング分析にはじまり、コンセプトや診療科目の選定、入居者の募集、開設後の調整役と様々なステージで大きな役割を果すことになります。
ただ、最近は意図した診療科目のクリニックが入らないケースや、そもそもテナントが埋まらないケースもあり、クリニックモールの企画自体が成り立たないということもあるそうです。

クリニックモールに入れば全てうまくいくという考え方ではなく、どのような企画運営会社が、どのようなコンセプトで開設するのか?テナントを募集する力をもっているか?開業のコンサルタントも行っているのか?などをよく確認し、開業場所を選定していく必要があると思われます。

アドバイザー情報


株式会社ユヤマ 地域医療支援室 メディカルコーディネーター課長
谷口 敏也(タニグチ トシヤ)

1988年に関西の地元医薬品卸に就職し病院を担当。15年の経験を積み重ねるうちに医薬品の販売以外に病院経営のアドバイスも手掛けるようになる。その後医薬品卸の再編の中、同社を退職、医療コンサルティング会社や病院事務長を勤めた後、株式会社ユヤマの医療コンサルとして開業支援・医療経営支援業務を行っている。

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