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歯科と医科の融合を目指して―
明確な開業目的と理念をスタッフが共有して
新しい医療形態を認知させた秘訣とは?

[2012.10.17]

山下巌(やましたいわお)先生プロフィール
JR大塚駅の駅前にある「医療法人社団法山会 山下診療所」。大塚と自由が丘に診療所を構えるこの医院の特色は歯科と内科を融合させた医療だ。院長である医師の山下巌先生は理想医療の実現のため日本口腔科学会や日本歯周病学会など歯科関連の学会にも精力的に所属。その診療体系の原点となる考えを開院当時から振り返りつつ語っていただいた。

 

 

歯科と医科の「接点」となる診療所を目指して開業

―開業に至るまでの経緯を教えてください。

もともと、母親が山下診療所の原型である歯科診療所やっていました。父親が東大の口腔外科の教授職という環境柄もあり、「医科と歯科と口腔外科という分野の接点となる医療の場をつくっていきたい」と思っていました。

大学では、外科や免疫学の研究なども行っていたのですが、いつからか大学でできないことがクリニックでできるかもしれない、と思うようになり、開業を考えはじめました。もちろん大学に残りたい気持ちもありましたが、山下診療所で育てられて、ここに勤めている人も昔から知っていましたし、皆さんを支えていきたいと思う気持ちで決意しました。

―医科と歯科の接点とは具体的にどういうことでしょうか。

例えば、内科の疾患だと思っていたのが実は顎関節の問題であったり、鼻からくる副鼻腔炎かと思ったら実は歯からくる歯性上顎洞炎であることがあります。逆に歯科系の疾患を疑われて歯科を受診したけれども、内科に回されたりすることも多々あります。
そもそも医科と歯科の分野を分けて考えるのは不自然なことだと思います。歯科治療もどんどん進んできて、例えばインプラントなどの比較的大きな侵襲の手術をすることきに内科的な全身管理ができていれば患者さんは安心して手術を受けることができます。

人間の体はひとつですから、トータルに見ていくことが絶対に必要なのですが、現実には中々実現できていないので、取り組んでみたいと思っていました。自分の置かれた環境下だからできることはどんなことだろう、と考えたときに出てきたのが、現在の診療体系だったわけです。自分ができるのは医科なので、歯科のことも勉強しながら、内科のセクションを作ってお互いに協力しながらやっていく体制をつくってきました。
 

 

分野に縛られない医療のジェネラリストの道を決意

 ―何歳ぐらいから具体的に考え出したのですか。

30歳前半くらいだったと思います。まずは自分ができることをやろうと思っていました。開業医は勤務医を経て余生でやるものだという考えを持つ方もいらっしゃいますが、私は開業医になってから経験を積み重ねていこうと考えました。そのためには若いうちがいいのです。それは、一般社会で言えば、サラリーマンが定年まで勤めて脱サラして何かをやるか、若くして起業するか、ということに似ているかもしれませんね。

―それなりのビジョンがないとできないですよね。

そうですね。今は、プライマリケア思考が強くなってきていると感じています。
先日も、福岡で開催された日本プライマリケア連合学会に参加しましたが、若い先生が沢山参加していました。私の場合は歯科や口腔外科に関連したことを専門としてもっているのですが、それだけではなく「やれることは何でもやろう」「開業医になってから勉強しよう」とやる気に燃えていましたし、診療所だからできることは何だろうと日々考えながら、自分の間口を広げる努力はしてきました。

今はプライマリケア学会が専門医をつくるようにもなってきたので、「ジェネラリスト」がひとつの専門として認められてきましたが、10年前のジェネラリストは何らかのスペシャリストが、開業してからジェネラリストを名乗るというようなパターンでした。私は患者さんに求められているものを勉強していくということが真実だと思っています。そういう形のキャリアを歩んでいる人は少ないので、開業理由や専門を聞かれると考えてしまいますが、「専門にこだわるのではなく、今は幅広い診療に取り組んでいる」と答えることにしています。