Home>>Cross Talk's Column>>Case③ 患者&スタッフをケアする 医院環境での音楽活用術(2)

患者&スタッフをケアする 医院環境での音楽活用術
(2)心を落ち着かせるBGMの選び方

[2012.10.15]

和合治久先生プロフィール
埼玉医科大学 保健医療学部 教授。心のケアや病気の予防・改善のため、音楽の力を用いる「音楽療法」研究の第一人者。特にモーツァルト音楽療法の研究に注力し、その成果を音楽CDの監修やコンサートの企画、講演会などで積極的に活用している。埼玉医科大学では予防医学としての医療を学ぶ健康医療科学科の学生への教育に学科長として尽力している。

沖秀史氏プロフィール
㈱USEN 放送企画本部 本部長。関西大学卒業後、株式会社USENに入社。CM制作ディレクター、洋楽、邦楽番組制作ディレクターを経て、現在USEN音楽放送の番組編成と制作を統括。自社の音楽放送のみならず様々な媒体で、アーティストが創り出す素晴らしい音楽が持つ奥深さを丁寧に紹介していくことを使命として、日々の仕事に取り組んでいる。
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どんな音楽が患者にとって有効なのか?

沖さん
実際の現場だと、小児科であればアニメソングなどをかけて子供を不安から解放したりするでしょう。ただ、その後診療室に入ると、子供には怖そうに見える先生や看護師がいます。
そこでもう一段踏み込んで、音楽を提供してあげるということは必要であると思いますね。

和合先生
それは必要だと思います。子供たちがキレるとか荒れるとかいう場面において、安静に導くような音のパターンがあります。赤ちゃんの時に聞いた音楽や母親の胎内にいた時に羊水の中で聞いていた音がそうです。
たとえば、レジ袋をこするざわざわとした音が、赤ちゃんが母親の胎内で聞いていた音、それは「海の音」に近くてよいと言われています。その音を覚えていて、聞くとすぐ赤ちゃんが泣き止むといったことがあります。
そのような音を、ある音楽と一緒に合わせるのもひとつのアイディアとしていいと思います。

沖さん
診療科目によって様々ですよね。開業医の先生が、実際に音楽を使っていく時には十分気を付けなくてはいけないでしょう。使い方をひとつ誤ってしまうと、患者さんに不快な思いをさせてしまったり、診断結果に影響を及ぼしたりする可能性がある。
基本的には落ち着いた音楽をセレクトしていくことが大切ですよね。 若者が集まるからといって、ロックをかけてしまうと・・・・・・

和合先生
交感神経が優位になってしまいます。

沖さん
だから、開業医の方は気を付けて音楽を流してほしいということですよね。
弊社としては医療の現場として、その医院の質をケアする演出ツールとしての音楽の使い方を考えてきました。患者さんの導線に応じて、入り口は格調高く、子供の待合室は子供向けの音楽が流れていて、いよいよ中の待合室はモーツァルト、といったように。そして、治療が終わった後は、開放された場所だから賑やかな音楽でもいいのかもしれません。

 

 

副交感神経に働きかける4000ヘルツの音

和合先生
続いて、副交感神経にスイッチが入る音楽のパターンについてお話をしていきたいのですが、音楽の音響学的な要素というのはいくつかあり、メロディ、リズム、音が高い・低いというピッチ、テンポ、音と音がぶつかる倍音、ゆらぎと言われているせせらぎのような音、音量や音高を震わせるビブラートなどの要素があって、いちばんスイッチが入りやすいのは何かを分析しました。

たとえば、自分の脈拍や心拍に合致したものを聞くと、非常に入りやすいのですが、音のピッチだと、非常に高い4000ヘルツ前後は周波数の観点からいくと副交感神経のスイッチが入りやすいのです。
それは人間の耳が、全員形が違うとは言えども、構造が一緒ででこぼこしていることに関係しています。これは霊長類の特徴的な構造で、ウサギや犬、猫にはこの特長はなく、ゴリラ、チンパンジー、オラウータンは近いのですが、この構造の集音能力として4000ヘルツが最も集音する訳ですね。

沖さん
4000ヘルツと言うと、一般的にはどんな音でしょうか?

和合先生
赤ちゃんの泣き声がそうです。電車の隣の車両から赤ちゃんの泣き声がするとみんなすぐ反応しますよね。これは最も敏感に感じ取れる音だからです。
赤ちゃんの声を聞いていると副交感神経のスイッチが入るのかなと思うこともありますね。おそらく人類500万年の歴史で生存確率を高めるために、弱い赤ちゃんが敵に襲われないよう、生理的に好きも嫌いも関係なく反応するようになっているのでしょう。