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患者&スタッフをケアする 医院環境での音楽活用術
(1)医院環境における音楽の役割とは?

[2012.09.24]

和合治久先生プロフィール
埼玉医科大学 保健医療学部 教授。心のケアや病気の予防・改善のため、音楽の力を用いる「音楽療法」研究の第一人者。特にモーツァルト音楽療法の研究に注力し、その成果を音楽CDの監修やコンサートの企画、講演会などで積極的に活用している。埼玉医科大学では予防医学としての医療を学ぶ健康医療科学科の学生への教育に学科長として尽力している。

沖秀史氏プロフィール
㈱USEN 放送企画本部 本部長。関西大学卒業後、株式会社USENに入社。CM制作ディレクター、洋楽、邦楽番組制作ディレクターを経て、現在USEN音楽放送の番組編成と制作を統括。自社の音楽放送のみならず様々な媒体で、アーティストが創り出す素晴らしい音楽が持つ奥深さを丁寧に紹介していくことを使命として、日々の仕事に取り組んでいる。
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「音楽で心が落ち着くなどといっても、気分の問題に過ぎない」そう思っていらっしゃる方も多いと思います。しかし、音楽によって血液循環がよくなったり、痛みが緩和するなど、生理的な影響が分析され、その効果が実証され始めています。そんな音楽療法の第一人者、和合先生に医療現場での音楽の役割について伺いました。
対談のお相手は、オルゴールやクラシックなど医療機関向けの音楽番組を届ける㈱USENの放送企画本部長 沖さん。お二人の対談には、円滑な医院運営における音楽活用のヒントがたくさん詰まっています。

和合先生が考える医院環境における音楽使用の目的

沖さん
最近では院内にBGMを流す方が増えていますよね。医学的にはどんな効果があるのか、音楽療法の専門家である和合先生、教えていただきたいです。

和合先生
医科も歯科も含めて、クリニックや病院などでは、様々な目的で音楽が導入されていますね。患者さんに対して、生理的な面、精神的な面などでのプラスの波及効果を意識して、院内で効果的なBGMを流すということはとても意味があると思います。どんな目的で使われているのか、お話していきたいと思います。


患者さんの心を鎮める
大人の患者さんは、どんな治療を受けるのか、痛みを伴っている場合は特に不安があります。お子さんは不安に加えて、大人のように我慢ができませんので、院内で走ったり、大きな声を出したりというようなことが現象としてあります。それを音楽によってどう鎮めていくのか、どう穏やかにしていったらいいかということは、大きな課題となります。

患者さんの正しい検査を誘導する
検査の前に不安要素があると、たとえば血圧が上ってきたり、心臓がドキドキしてきたりといった生理的な反応が強くなり、正しい検査結果が出てこないということがあります。本来、検査前の身体を平静な状態に持っていき、緊張や不安とは関係のない形で得られたデータが正しいデータとなります。正しいデータが得られれば、病気との因果関係が理解できます。そういう点でBGMは重要になってくるでしょう。

患者さんの痛みを軽減する
治療を受けて鎮痛剤を投与すれば痛みは治まりますが、待合室で待っている段階でBGMによってすでに感じている痛みがある程度抑えられたら助かるでしょう。

これらの目的をどう果たすかについては、このあとお話していきたいと思います。

 

 

副交感神経に働きかける音楽療法

和合先生
病院によってBGMの選び方はいろいろあると思いますが、心を安定させる「音楽療法」ということで言えば、副交感神経を刺激するようなパターンを選ぶことになります。代表となるのは「モーツァルト」ですね。

沖さん
副交感神経に働きかける音楽療法は、先生がずっと追求していらしたことですね。もう少し詳しく、わかりやすく教えてくださいますか?

和合先生
約20年前、副交感神経にスイッチが入る音楽のパターンがあれば日々の生活で使えるのではないかと考えるようになり、未病解決に音楽がどういう役割を果たせるかを考えて研究に取り組んできました。その結果、副交感神経のスイッチが入るパターンを、モーツァルトの音楽で見出すことができました。

ご存知のように自律神経という自分の意識とは関係なく動いている神経系があります。
自律神経というのは、昔だったら太陽が昇り、昼間活動する時に働く「交感神経」、夜寝静まって心を穏やかにする、あるいは身体を休ませる時に働く「副交感神経」の二つが、お天道様のリズムでうまく働いてきた訳ですが、電気が発明されて以降は、夜でも煌々と明かりが照っている中、昼夜逆転で生活している方もいらっしゃいます。

現代社会の特に先進国の状況は、確実に交感神経が優位な生活スタイルです。副交感神経は交感神経に拮抗するように働いていますから、副交感神経が働く場面をどう音楽で作り出すかということがとても大事です。自律神経というのは交感神経と副交感神経のメリハリとバランスなのです。

沖さん
そのバランスが崩れると、どのようなことが起こるのでしょうか?

和合先生
交感神経が過剰に働くと神経末端からアドレナリンが出て活動的になる一方、活動しすぎて疲労が必ず出てきます。いつも心が落ち着かず、興奮しているような状況になります。
アドレナリンの生理的な反応として、血管を収縮させる作用もあり、アドレナリンが過剰にあれば、血管が収縮して血圧があがります。キレやすい子供もいますが、これらの状況も関連しているでしょう。

次回は、どんな音楽が医院環境に望ましいのかをより具体的に紹介していきます。