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矢野 厚登
税理士法人ブレインパートナー 代表

一からの医院承継
(3)医院承継を成功に導く思考のポイント

前回のコラムでは、医院承継で多くみられる問題点・医院承継がうまくいかない本当の理由についてお話ししました。今回は、『医院承継を成功に導く思考のポイント』と題しまして、その考え方(帝王学)について、弊社の法人事業承継部門のシニアコンサルタント、西出より紹介させていただきます。



西出 吉辰(にしで よしたつ)プロフィール

税理士法人ブレインパートナー法人・事業承継部門シニアコンサルタント。東京工業大学大学院経営工学専攻を修了後、アクセンチュアにて大手企業に対する経営コンサルティング(事業計画・事業管理)を実施。その後税理士法人トーマツ、名古屋国税局での相続や事業承継に関する業務を経て、現在は税理士法人ブレインパートナーにて法人及び事業承継を担当。税理士試験科目合格者(所得税法・法人税法)。


 

ポイント1:医院承継を成功させている院長の行動パターンから学ぶ

医院承継を成功させている院長には、共通点が多くあります。 代表的な例を4つ紹介します。
 

(1) 「院長の帝王学」を後継者にきちんと伝えている
後継者が一番院長から聞いておきたいことは、院長の経営ノウハウや医院を行う上での価値観です。これをしっかりと後継者に伝えている医院では、医院承継が成功しているケースが極めて多いといえます。

(2) その交代の事実を、広く周囲に認識させている
クリニックの医院承継で多く見られるのは、外部に対しては挨拶状等でその周知徹底を図るのですが、肝心の従業員にとってはそこまでの情報徹底が行われていないケースが多いようです。しかし、これでは従業員はどちらの言うことを仰いで仕事を行って良いかわからない状況になってしまいます。
従業員にとっては「いつのまにか院長交代がおこなわれている」と捉えられてしまう、というケースが多く発生します。

(3) 謙虚な心を忘れずに常に真摯な態度で他者のアドバイスを聞く
医院承継とは、苦労して自身が築き上げた医院を後継者の方に渡すことであり、そこには「本当は渡したくない」という感情論的問題が起こってしまうことが往々にしてあるものです。 このような場合において、外部の人間は当然的確なアドバイスをするべきであり、また院長はその意見に対して真摯に耳を傾けるべきでしょう。
他者からの冷静な意見を積極的に取り入れ、実行した院長が、結局は医院承継を成功させているのです。

(4) 後継者の方が医院を継いだ後は自分からは決して出しゃばらない
院長は往々にして多く口を出してしまいがちになるものです。しかしこれでは、新院長がやりづらいこと極まりないでしょう。「任せるならば徹底的に任せる」ことが重要であるといえます。
アドバイスに関しては、あくまで後継者が教えを請うてきた場合にのみ行うようにし、そのような時には思う存分に的確なアドバイスをしてあげると良いでしょう。


ポイント2:医院承継は後継者の立場で考えていますか?

院長は医院承継を行うにあたり、「後継者の立場」で考えるということが、非常に重要かつ、成功へのカギを握っているといえるでしょう。
後継者の立場になるには、「後継者の抱く悩み」を理解することで、有効な手段を講じることができます。後継者の多くが抱える悩みと院長がすべき対処方法を次に紹介します。

① 医院経営に対する自信が持てない
これは後継者特有の悩みであり、実際に業務を行い実績を積み重ね、自信が持てるようになるまでは当然の心理状態であるといえます。 したがって、院長は後継者の抱く不安感をただ情けなく感じるのではなく、ここで後継者の話をじっくりと聴き、相談に乗ることが良いでしょう。

② 古株の従業員と円滑な関係を築けない
開業院長は自分で人を選び、そしてその側に置いておくことができます。しかし、後継者は先代院長が築いた人間関係の中に自分の身を置かなくてはなりません。特に、ベテラン従業員との人間関係に悩むことは、多くの後継者に共通するケースとして挙げることができます。
ここで役に立つのはコミュニケーションスキルで、後継者にこの術をきちんと身につけさせておかなければなりません。

 

ポイント3:「医院承継の主役は自己である」という認識はありますか?

医院承継において、「主役は自分である」という意識があれば、自分から「よりよい医院承継が行おう」と行動を起こすことになるでしょう。 すると後継者養成にも力が入り、またその熱意が周りにも伝わり、医院承継対策における全てが良い方向に向かっていくのです。

 

ポイント4:「後継者を不幸にしない」という意志を持っていますか?

院長は医院承継を成功させるために「後継者を不幸にしない」という意志が求められます。「後継者の不幸」とは、多額の借金等を先代院長から押し付けられてしまう、ということです。
後継者としてみればこれはまさに「災難」でしょう。院長が後継者に対して資産を残し、そのビジネスが末永く続くようにするためには、「院長の自分は今、何をすべきか」ということをじっくり思考することです。
この思考は現状の業務の改善にもつながる「医院承継を成功させる根本の発想」であるといえるでしょう。

 

ポイント5:「後継者が力を発揮できる」舞台を用意していますか?

後継者が医院を受け継ぎ、その持てる力を存分に発揮することができるかは、承継される環境によるところも大きいでしょう。そして、その環境をつくるのは「現在の院長」です。
そのためには、後継者の立場に立ち、医院を受け継ぐことによる苦労や困難を予測し、それらを未然に防ぎ、乗り越えられるように思案して承継していくことが大切なのです。

医院承継を円滑に進めるためには、以上の思考が大切となります。

 

 


次回のコラムでは、承継のための具体的な手続き・作業、「後継者に医院を託す前に院長がやっておかなければならないこと」について、同じく弊社の西出より紹介させていただきます。

アドバイザー情報


税理士法人ブレインパートナー 代表
矢野 厚登(ヤノ ヒロト)

昭和62年に日本債券信用銀行入社後、監査法人トーマツを経て、平成9年にブレインパートナーを設立。
単に記帳代行業務などだけを請け負うだけではなく、経営者のパートナーとして共に事業のことを真剣に考える関係になるよう心がけています。
著書もいくつかあり、「介護保険と病院経営」「病医院の経営・会計・税務」等を執筆しています。

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