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矢野 厚登
税理士法人ブレインパートナー 代表

一からの医院承継
(2)医院承継がうまくいかない本当の理由

前回のコラムでは、医院承継のポイントと題しまして、医院承継の現状及びその概要についてお話ししました。今回は医院承継で多く見られる問題点について、より詳しくお話ししたいと思います。

進まない承継の問題点:後継者側

私共がよく相談をお受けする医院承継での問題の一つに、根本的に「なかなか医院承継が進まない」という事があります。この問題には、後継者側、院長側とそれぞれ理由があります。
 

まず私共がよく聞く後継者側の理由としまして

①後継者(ご子息)が、医院を継ぎたいと考えていない
・医院建物そのものが古い
・古参スタッフの問題
・地域人口の減少や競合医院の増加など医院の周りの環境の悪化

②後継者(ご子息)が十分に育っていない

といった問題があります。


進まない承継の問題点:院長側

そして、これだけではなく院長自身に多くの問題点を抱えているケースが多くみられるのもまた事実です。
院長側の理由とは、具体的には次のようなものが挙げられます。

 

【院長自身が持つ医院承継の円滑化を阻害する要因】

①頭が固く「他人のアドバイス」を素直に聞き入れられない
②「仕事が命」であり生きがいとなってしまっている
③医院承継後の医院の動向が心配で引退することができない
④「院長の帝王学」を後継者にきちんと伝えていない


それぞれについて詳しく解説していきます。

①頭が固くアドバイスを素直に聞き入れられない
長い間院長として人生を過ごしてきた先生方は、診療、さらには医院経営が人生で面白く感じられるものであり、やりがいもあるのです。したがって、院長自身が倒れるまで医院経営を続けてしまいがちです。
このような医院では当然ながら、後継者のことは考えていないケースが多くみられます。後継者のことについて他者に触れられると、ただでさえそれについては頭にないので、余計に拒否反応を起こしてしまうのです。
結果、医院承継が院長交代の直前にあわただしく、そして突然に行われることとなってしまい、このような医院承継はスタッフは元より、最も大事な患者さんにとっても大きな負担をかけてしまうのではないでしょうか。

②「仕事が命」であり生きがいとなってしまっている
医院の進路を自ら決め、主人公として医療ビジネスの世界を闊歩することのできる医院経営。
開業時の苦労も人一倍だったかと思いますが、成功した際の喜びはこの苦労を大きく上回るものでしょう。その達成感と充実感は一旦これを味わってしまうと病みつきになってしまうものです。
このような「医院経営に対する大きなやりがいから、それを放棄する気になれない」という理由は、医院承継の進まない大きな原因の一つになっているのです。
しかし、本当に医院の繁栄を願うなら、院長という権力の座にいつまでも固執することなく、若い世代にこれを託すという決断も必要ではないでしょうか。

③クリニックを譲り渡した後、上手くいくか心配で未だに引退できない
医院経営とは、いつの時代においても至極大変なものであり、その大変さが薄らぐのを待ってから医院承継を行うのでは、いつまでたっても医院承継のタイミングを決断することはできないでしょう。
後継者や後に残るスタッフを信頼し次代に夢を託す決断力も、医院承継を上手くいかせるための重要なポイントになるのではないでしょうか。

④「院長の帝王学」を後継者にきちんと伝えていない
後継者であるご子息は、医業技術の知識・経験の習得を最優先してきておられます。よって当然のことながら、医院経営についての知識・経験は十分とは言えません。
もちろん、一般的な経営は外部のコンサルタント等を活用することはできます。しかしいわゆる「院長の帝王学」、つまり院長の経営ノウハウや医院を行う上での価値観、上手なスタッフとの付き合い方は、外部に委託することはできませんし、短い時間で次の世代に引き継ぐことは困難です。
これを意識した上で、長い期間を掛けて、しっかりと後継者に伝えていくことも円滑な事業承継の必要なことだと思います。

では、どうすれば医院承継を円滑に進めることができるのでしょうか。
次回のコラムでは、「成功に導く思考のポイント」についてお話ししたいと思います。

 

アドバイザー情報


税理士法人ブレインパートナー 代表
矢野 厚登(ヤノ ヒロト)

昭和62年に日本債券信用銀行入社後、監査法人トーマツを経て、平成9年にブレインパートナーを設立。
単に記帳代行業務などだけを請け負うだけではなく、経営者のパートナーとして共に事業のことを真剣に考える関係になるよう心がけています。
著書もいくつかあり、「介護保険と病院経営」「病医院の経営・会計・税務」等を執筆しています。

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