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岸部 宏一
横浜医療法務事務所 代表

医業経営コンサルタントが法務から考える医院承継
① 承継機会が増える時代に備えて法務知識を学べ

医院の世代交代の時期が到来している!


診療所の開設者・法人代表者の年齢分布をみると、50歳代が最も多いものの30~40歳代の合計と70代以上がほぼ拮抗し、60歳代がそれに次ぐ分布となっています。このことは、昭和の時代に開設された診療所がそろそろ世代交代の時期を迎えており、次の世代へのバトンタッチが急務となっていることを意味すると考えるのが自然でしょう。
 



そこで、今回は診療所の世代交代としての承継につき、臨床研修等修了医師(以下本稿では「医師」とします)の個人開設にかかる診療所の承継に関する法務実務を中心に取り上げることとします。

尚、「承継」という語の定義は必ずしも明確ではありませんが、ここでは「診療所」について、施設・設備等に代表される有形資産及び、いわゆる経営権等の無形資産を、前開設者から新開設者へ包括的に移転することと定義づけることとします。


承継の基本ルール

個人開設にかかる診療所の承継に際しては、仮に全く同じ建物・同じ名称・同じ職員を引継いだとしても、旧開設者の診療所を廃止し、新たに新開設者による全く別の診療所を開設することとなります。

そのため、承継前の診療所で発生したすべての権利および義務は承継後も旧開設者に留まり、新開設者は承継後の診療所について発生する権利および義務のみを負うのが原則です。特に相手方の同意を得ない限り、種々の契約や承継前に発生した債権・債務等を引継ぐことはなく、医療機関としての開設や保険診療に関する許認可やカルテ等の情報も、無制限に引継ぐことはできないことに注意が必要です。

ただし、事業承継に際して旧開設者から新開設者へカルテ等の情報を提供することは、個人情報保護法上の「第三者への提供」の例外(個人情報保護法23条4項2号)に該当することからも、必ずしも個々の患者の同意を得なくとも引き継ぐことが可能であると解されています。

もちろん、これらの前提事項については、承継者と被承継者の関係が親子・親族間のであっても全くの他人間であっても、またはその譲渡が有償であっても無償であっても、基本的に差異はありません。

当然のことながら、個人開設者である医師が死亡し、相続人である後継者の医師が診療所等の財産を相続により包括承継した場合であっても、診療所の開設者たる地位をそのまま引き継ぐものではないことに留意が必要です。

参考までに承継開業と新規開業の違いを簡単にまとめてみます。

 



次回も引き続き「承継」について、その具体的な対象となる資産や関係者について紹介していきます。

アドバイザー情報


横浜医療法務事務所 代表
岸部 宏一(キシベ コウイチ)

1988年中央大学商学部卒。バイエル薬品㈱、民間医療法人事務長、㈱川原経営総合センター医療経営指導部を経て2004年同僚と共に独立。
医業経営コンサルタント/行政書士として医療機関の経営支援と法務実務の傍ら、医療法務分野の第一人者として各種団体等での講演を通じ医療経営についての啓蒙活動を継続している。

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