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戸崎 泰史
株式会社日本政策金融公庫

経営者に意識を切り替え!
②理解しているかどうかで大きな違い『採算ライン』

数字が苦手な方も把握すべき「採算ライン」

経営者として、自分のクリニックがどのような経営状態にあるかを把握することは必要でしょう。もちろん、みなさんは日々の診療などで非常に多忙な訳ですから、クリニックの隅から隅までを把握するのは困難でしょう。
しかし、クリニックを事業として経営していく上で、最低限把握して頂きたい数字というものがあります。 その数字が採算ライン(収支がトントンになる売上)です。

クリニックの場合、その他の様々な業種と異なり、患者さん1人当たりの売上単価が、おおよそ診療科によって決まっていますので、どのぐらいの患者さんが来院されれば、採算ラインを超えるのかを考えることでもあります。


 

事例で見る採算ライン


では、ここで具体的な事例を使って考えていきましょう。
クリニックを経営するAさん、1カ月の経費(人件費、家賃、諸支払いで売上による変動はない。)が90万円、診療に使用する材料費が売上に対して10%かかるとします。では、売上から経費と材料費を引いて0になる、つまり、経費と材料費の合計が売上とイコールなる採算ラインの売上はどのくらいでしょう。
ここまでの内容を図にすると、以下のようなものになります。


採算ラインの売上をXとすると、
X万円=90万円+(X万円×10%)
X万円=90万円+0.1X万円
X万円-0.1X万円=90万円
0.9X万円=90万円
X=100万円 となります。

 

1日何人の来院が必要か

続いて、もう少し掘り下げてみましょう。
Aさんの診療科において、患者さん1人当たりの単価は5千円です。月の診療日数は20日であれば、1日何人の患者さんが来院すれば、採算ラインの売上に達するでしょうか?
採算ラインは、先ほどの計算から100万円と分かっています。 診療日数から考えると、1日当たりいくらの売上が必要でしょう。

100万円÷20日=5万円/日 になります。

では5万円/日の売上を確保するには何人の来院が必要でしょうか。

5万円÷5千円/人=10人 になります。

ここまでの計算過程をご覧になり、どのような感想をお持ちになりましたか。 このぐらいであれば、何とか計算できる気がしてきませんか。
「採算ライン」は、またの名を「損益分岐点売上高」とも言います。この名前を聞いただけで、何だか難しい、専門的な計算が必要なのではと構えてしまう方が多いですが、算出するための過程は四則演算の世界なのです。

金融機関に対する信用力をアップ!

私も、今まで多くのご相談者にお会いしてきました。
先ほどまで、クリニックの経営方針やコンセプト、今までの診療経験、ご自身の診療技術などについては饒舌に語られていたのに、採算ライン、必要来院数など数字の話しに移った途端、寡黙な先生になられてしまう場面を、何度も経験してきました。
沈黙が続いたあと、「数字のことは税理士に任せているので、正直よく分からないんだよね。」、「税理士に直接確認してもらえないかな。」などと提案される先生も少なくありません。

見方を変えると、金融機関の担当者は、「数字の事は苦手だろう」という、先入観を持って対応しているケースが多いでしょう。 つまり、最低限の数字を把握しているだけで、「今のウチのクリニックだと、1日○○人の来院がないとちょっと厳しいなあ。」、「今回の開業計画では、採算ラインは月に○○○万円になります。」との発言が出ただけで、「この先生は、数字のことも良く把握している」と、金融機関に対する先生の信用力はアップすることになるでしょう。

みなさん、是非一度電卓を片手に計算してみて、経営者の実感を得て下さい。

アドバイザー情報


株式会社日本政策金融公庫
戸崎 泰史(トザキ ヤスシ)

株式会社日本政策金融公庫国民生活事業本部融資企画部営業企画グループリーダー。
1993年に国民金融公庫に入庫。東京(現東京中央)支店をはじめ複数の支店勤務を経て、2012年4月から現職。長年のクリニック開業の融資審査経験を活かし、セミナーでの講演をはじめ、開業のサポートを行っている。

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