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井戸 薫
中電興業株式会社 デザイン室 チーフディレクター

人間工学から考える効果的な屋外広告のデザインとは

広告は目立てばいいだけではない

一般的に、広告は目立つことが大切だと考える人が多いようです。
もちろん目立つのは悪いことではないと思いますが、もっと重要なことが幾つかあり、大掴みにして“好感度” “視認性” “説得力”の三点が挙げられると思います。そして、それらを総合して広告効果と表現しても良いでしょう。 実際に、目立っていても内容を勘違いされたり、伝えるべき情報が読めない広告は結構多くあるものです。テレビCMでも、CM自体は注目されているものの、そのスポンサーや商品名の記憶が不明瞭となっているケースが散見されます。

また、広告効果を高めるためにはテレビや屋外広告、インターネットなど、各種広告媒体それぞれのメリット、デメリットを把握し、特長を活かしながら表現することが求められると思います。

 

人の視覚範囲から考える広告デザイン

屋外広告の場合では、テレビCMとは全く逆で、静止した画面を人が移動しながら見る状況となっており、たとえば運転中であれば、信号などで停車している場合は別として、相当なスピードで移動しつつ視認することとなります。 時速50kmで走行していれば1秒で14m程移動するため、じっくり視認することは出来ないので、いかに短い時間で適切に情報が伝えられるかを、しっかりと考慮して広告を作るべきでしょう。
また、屋外広告では、人の眼と広告面とは相当な距離がありますので、雑誌やテレビとは随分な違いがあり、文字の大きさなどにも留意を要するのは当然です。

近年こうした人間の視野や反応、行動特性等に関してデータ分析が行われ、人間工学などとしてまとめられており、屋外広告にあてはめれば「瞬時の視認性」の確保と、行動様式に対する「人の視覚範囲」の想定が、デザイン制作するに当たって重要なポイントになると思います。

具体的にお話すれば、「瞬時の視認性」については、人が瞬時に理解できる情報量は、一般的に3項目15文字程度と言われており、通行者に届けるべき主な情報は、シンプルにまとめることが大切だと思われます。 「人の視覚範囲」は、歩行中であればやや下向きで天地30度、左右幅40度の範囲。乗車中では前方を走行する車を中心として、左右4.6度の範囲を無意識に目まぐるしく動かしていますので、この範囲を前提として、広告の設置場所や文字の大きさ、デザインに配慮が必要でしょう。


                   徒歩での視覚範囲                            車での視覚範囲

 

記憶のメカニズムから考える広告デザイン

さらに、人の記憶のメカニズムとして、眼にする。視認する。記憶する。はそれぞれ異なった反応様式であり、目立つことは人に眼を向けさせる効果はありますが、必ずしも視認、記憶されるとは限りません。むしろ、黄、赤などの派手な色彩は、瞬時の視認性として色に注目させるため、意外に情報が届かない傾向となりがちです。

また、人に認識、記憶させるためには、好感度が求められます。
大企業の広告が「美しい、かわいい、かっこいい、楽しい」などのイメージでまとめられているのは、半世紀を超える広告デザインの歴史から引き出された、広告効果を上げるための必須条件であり、屋外広告にも共通する原理です。人には好感度の高い情報は記憶しようとする意識が働き、嫌な情報は忘れようとするからです。

屋外広告の場合は、以上のような点について考慮されたデザインでまとめるのが、効果ある広告となるはずです。ですから、単に派手、カッコ良い、目立つことを考えるだけでは広告効果の弱いものになって、経費の無駄遣いとなりかねません。


野立て看板と電柱広告を使い分ける

また、野立て看板と電柱広告を比較し、電柱広告は面積が狭いので情報量が少なく、また目立たないと言われる場合がありますが、人間工学的に考察し、人の視野角度を道路状況にあてはめれば、野立て看板は相当遠くの位置にあるものが視野範囲に入るのに対して、道路際の電柱広告は近くで視認できるため、あまり差の無いことが判ってきます。むしろ設置場所と人の視野範囲、人と広告面との距離を考え、状況に応じて使い分けするのが効果的でしょう。

とくに、電柱広告の連続的掲出では、瞬時の視認の連続作用ですから、サブリミナル効果(記憶へのすり込み効果)が期待でき、強い広告効果が発生します。
あるいは、歩道上にある電柱広告の場合では、歩行者が100%に近い確率で視認しているはずであり、後は、いかに魅力的な、しかも視認性の高いデザインで通行者の目を奪うか、を考えることが大切だと思います。


 

アドバイザー情報


中電興業株式会社 デザイン室 チーフディレクター
井戸 薫(イド カオル)

愛知県立芸術大学卒業後、各種メーカー等に勤務し、商品開発やアドバタイジングなどデザインの分野一途で従事。

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