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岸部 宏一
横浜医療法務事務所 代表

診療所開設に際しての許認可手続きとは?
1.開設と保険医療機関指定のための手続き

保険診療を行うためにも手続きが必要


医師の『開業』とは、医療法上は『臨床研修等修了医師』が個人で『診療所』を開設することを指す。

しかし、医療法上の診療所というだけでは公的医療保険による診療(保険診療)を行うことはできず、いわゆる『自費診療』をできるのみである。保険診療を行うためには、医療法上の診療所として開設手続きを経た後に、『保険医療機関』としての指定を受ける手続が必要となる。ここでは、医師個人が無床診療所を開設し、保険診療を開始する上で必要となる許認可手続きにつき、主なものを整理してみることとしたい。

尚、ここで取り上げるのはあくまで医師個人開設にかかる無床診療所としての一般的な許認可手続のみであり、その他事業所一般に適用される各種法令等については、原則として他の事業所と同様に適用されることになる。

その1:診療所開設における許認可手続き


【開設の要件】
診療所は清潔を保持し、衛生・防火・保安の面で安全でなければならず、診療の用に供する電気・光線・蒸気・ガス等に関する構造設備には危険防止措置を講ずる必要がある。管理者として臨床研修を終了した医師が常駐する他、医師が常時3名以上勤務する診療所は、原則として1名以上の専属薬剤師を置かなければならない。
診療所の管理者は、ⅰ)管理者氏名、ⅱ)診療に従事する医師の氏名、ⅲ)診療日および診療時間を診療所入口、受付または待合室付近の見やすい場所に掲示しなければならない。

【開設手続】
臨床研修等修了医師が診療所を開設するに当たっては、特に許可は要せず、開設後10日以内に都道府県知事に届出ることとされている。ただし、設備基準等につき要件を満たしていないと判断される場合は、所轄保健所が届出を収受しない、または保留する場合があるので、必ず事前に所轄保健所と協議しながら進めることが肝要である。
尚、平成16年4月1日以前に免許を受けた医師については、臨床研修を修了しているものとみなされる。

 

その2:保険医療機関における許認可手続き



【保険医療機関指定】
保険診療をするに当たっては、健康保険法に基づく保険医療機関としての指定を受ける必要がある。
この申請は、診療所の開設者が所轄地方厚生局長(厚生局都道府県事務所)宛に申請することになる。この指定を受けることで、健康保険法及び国民健康保険法に基づく療養の給付を担当する保険医療機関となり、保険者に対して診療報酬を請求することが可能となる。指定申請時の添付書類は、以下のとおりである。

ⅰ)診療所開設届出書(図1)
ⅱ)保険医の氏名および登録の記号および番号並びに担当診療科名を記載した書類
ⅲ)管理者以外の医師のそれぞれの数を記載した書類
ⅳ)予定している通常週の診療日および診療時間の状況
ⅴ)その他指定の適格性等を確認するために必要な書類

上記指定申請は毎月中旬に締め切られ、当月下旬に開催される社会保険医療協議会の都道府県部会の審議を経て、翌月1日付の指定を受けることが通例である。保険指定の日付については、実際に保険診療を開始できる日として重要であるので、事前に所轄の厚生局都道府県事務所と十分に協議し、申請時には指定希望日を添付書類に記載するのが実務の取扱いである。
尚、この指定は指定された日から6年間有効であるが、個人開設の保険医療機関については、特に申し出がない限り自動更新される。

 




【施設基準・特掲診療料の届出】
診療報酬請求上、算定に要件がある項目については、個別に届出た後でなければ算定・請求ができない場合がある。保険医療機関としての指定を受けた後でなければ個別の届出は受理されないのが原則であるが、診療開始時から算定したい場合には、所轄厚生局都道府県事務所と相談の上、保険指定申請時に届出書を預ける等により対応することになる。

次回は、健康保険以外の公費負担医療等を行うための個別の法律について解説していきます。


アドバイザー情報


横浜医療法務事務所 代表
岸部 宏一(キシベ コウイチ)

1988年中央大学商学部卒。バイエル薬品㈱、民間医療法人事務長、㈱川原経営総合センター医療経営指導部を経て2004年同僚と共に独立。
医業経営コンサルタント/行政書士として医療機関の経営支援と法務実務の傍ら、医療法務分野の第一人者として各種団体等での講演を通じ医療経営についての啓蒙活動を継続している。